「上が北」or 「上が前」?

筆者の世代は小学校で地図は北が上と習った。大学生のころロシアの日本海周辺の地図を見せられ、南が上で、日本列島が逆さまなのに違和感を覚えた。

今、街を歩いているといろんなところで地図に出くわす。特に駅の近辺に地図が多い。以下に示すのはJR田町駅構内にある周辺案内図である。

この地図は斜め右下方向が北である。このようにWebサイト上で見る場合は微かに違和感を覚えるが、実際にこの案内図を前にした時には全く違和感を覚えない。これはこの案内図が駅構内の連絡通路にあり、案内図を見るとき(例えば改札から出てきた直後)、自分の向いている方向が案内図の上であると、目的地へ行くのに自分が見ている姿勢の右へ行けばよいか左へ行けばよいかが直感的にわかるからである。

ところが地下鉄三越前駅周辺案内図では勝手が違った。駅構内図は次のとおりである。

筆者は半蔵門線の三越前駅で下車、図中央付近の昇りエスカレーターに乗り、降りたあと斜め方向に歩いてさらに昇りエスカレーターに乗り、降りた直後に右にカーブを切りながら180度方向転換し、改札口に到達した。ここまで何度か方向転換を繰り返している。改札口を出ると右55度方向に地下通路が長く伸びている。通常、改札を出ると、左右90度方向か、正面0度方向に地下通路が伸びているので、ここで方向感覚が狂ってしまった。地下通路を見て考えたのは「この通路はどこに向かっているんだ?」ということであった。周辺案内図を探すと改札の右手に次の案内図を見つけた。

改札を出て右90度方向に少し進み、35度左に方向を変えてこの図に向き合う。この時点で方向感覚は全くなくなっている。日本橋北側の変則十字路の地下に居るのだが、地上の道路が見えるわけではないのでこの周辺案内図がぴんと来ない。次の部分拡大図を見ればわかるように地下道の形が分かりやすく示されていないからだ。

例えばGoogle Mapでは以下のような地図が表示される。このように地下通路が分かりやすく表現された案内図が欲しいと思った。

Google Mapより

前記周辺図の場所は上の図の「日本橋北詰」の文字列の「日」の位置である。そこにこの地下通路図があれば筆者は戸惑わなかったであろう。この地下通路図のさらに左には銀座線三越前駅があるのでそこまで記載する必要はある。地表の周辺図は地表へ出たところにあるのが望ましい。それが無理であれば地表への登り口の直前に配置してほしい。

次に示すのは地下鉄早稲田駅の階段手前の周辺案内図である。1は改札口を出て左手前方にある階段の手前にある周辺図であり、2は1の案内図の場所から階段を一つ昇り切ったT字通路正面にある周辺図である。

地下鉄早稲田駅周辺案内図1
地下鉄早稲田駅周辺案内図2

どちらの案内図も上が読み手が向いた方向(前)であるが、続けて向きの違う地図を見せられると少し混乱してしまう。ここは案内図は一つだけでいいのではないかと筆者は思う。ただし、案内図2を見た後、左の階段を上って道路に面したときは1の周辺案内図のほうが分かりやすい。しかし、右後方の階段を上ったときは2の上下を逆にしたものが分かりやすい。さらに、2は改札を出て前方通路の先の階段を上ったときに分かりやすいのだ。案内図の設置者はきっと悩んだすえにこの2つ設置したのであろう。

さて「上が北」か「上が前」かであるが、地図を見ながら移動したり、地図を見た直後に移動する場合は「上が前」のほうが使いやすい。田町駅の周辺図がそうであるし、カーナビの地図がそうである。教科書の地図や表示範囲が広い場合は「上が北」のほうが筆者の世代にはなじみやすい。若い世代がどうであるかはアンケートでも取って調べてみなければわからない。広い範囲を示した北が上の例を次に示す。地下鉄三田駅にある地下鉄案内図である。