芝5丁目の横断歩道を渡り始めたら突然前を自転車が横切った。危ない!と思ったが、歩行者がいるのにスピードを緩めた様子はなかった。通ったコースは下図の赤い曲線で、そのまま港勤労福祉会館の前の歩道に侵入して地図上方へ走行していった。私の動きは緑の矢印だ。この時横断歩道を渡ろうとしていたのは私を含めて両方向合わせて10人くらいはいた。
この自転車は道路交通法に違反しているのは明らかである。車道をペダルを踏みながら進行してきたのだから軽車両としての運転である。多分、その前は右の横断歩道のあたりで歩道から車道に出て、私の前を横切っていたと推測される。この交差点は歩車分離なので歩行者が渡り始めた時点で車両用の信号は全方向赤である。したがって信号無視である。自転車は横断歩道を渡ることは許されるが、降りて手で押して渡る場合だけである。しかしこの自転車は私の前と港勤労福祉会館前で2度、横断歩道を歩行者が歩いている状態で徐行せずに横断歩道を横切っているのである。
このあたりは交通量が多いので歩道にはすべて以下のような自転車走行可の道路標識か歩道上の表示がある。
歩行者優先であるから、歩道上で歩行者が立ち止まるような運転は許されない。しかし、上記自転車は歩道に進入後も速度を緩める様子はなかった。
別の日に同じ交差点で逆方向に横断歩道を渡っていると右側をすごいスピード(時速20km以上だと思われる)で自転車が走りすぎ、品川方面へ車道を走っていった。
交差点に進入する時点で車道を走ってきたか歩道を走ってきたかは定かではないが、交差点内で加速したわけではなさそうなので、かなりの速度で走ってきたことは確かだろう。このとき自転車が横切った横断歩道を渡っている歩行者は10人以上いた。
上の例だけではない。ネットを探せば自転車の走行マナーに対する批判は数多く見つかる。走行負荷の歩道をベルを鳴らして歩行者をどけながら走る自転車も数多く見受けられる。自分たちに歩道を走る権利があると考えているかのごとくだ。その時の都合に合わせてあるときは軽車両、ある時は歩行者に変身するのだ。横断歩道を運転したまま渡ることも日常茶飯事だ。横断歩道を手で押しながらわたるのは警察官以外ではほとんど見たことがない。
2番目に示した例と同じように、車道を走ってきて歩車分離の十字路に差し掛かった時、車両用信号が赤だと、そのまま横断歩道に沿って乗ったまま十字路を通過し、再び車道を走っていく自転車を何度も見かけたことがある。ほんとに自分に都合よく軽車両と歩行者を切り替えているのである。かなり悪質である。
そこで、道路交通法の自転車に関する部分を調べてみた。以下のとおりである。
・自転車は軽車両である(道路交通法二条1項十一号)
・軽車両は車両である(道路交通法二条1項八号)
・車両は、歩道のある道路においては、車道を通行しなければならない(道路交通法十七条1項)
・自動車及び原動機付自転車にあつては道路の左側に寄つて通行しなければならない(道路交通法十八条1項)
自転車が歩道を走行できるのは、自転車走行可の標識がある歩道、政令で定められた13歳未満の幼児と70歳以上の高齢者、及び身体障害者の運転する自転車、およびやむを得ないと認められるときである。この「やむを得ないと認められるとき」というのを運転者本人が勝手に危ないと判断したときだと解釈してはならない。警察官などが危ないと判断したときであることに注意しなければならない。
次の写真は筆者が時々通る道路である。向かって右の歩道は写真の右隅に自転車走行可の標識がある。右の歩道は若干細いためか視点から終点までの間にそのような標識はない。車道の左側に描かれているように自転車は車道の左側を走らなければならないのである。ところが、自転車はどちらの歩道も我が物顔に走っている。狭い側の歩道では歩行者は結構危険を感じる場合もある。
原則として自転車は歩道を通行することはできない。ただし例外がある。道路交通法六十三条の四にそれが規定されている。
六十三条の四 普通自転車は、次に掲げるときは、第十七条第一項の規定にかかわらず、歩道を通行することができる。
一 道路標識等により普通自転車が当該歩道を通行することができることとされているとき。
二 当該普通自転車の運転者が、児童、幼児その他の普通自転車により車道を通行することが危険であると認められるものとして政令で定める者であるとき。
三 前二号に掲げるもののほか、車道又は交通の状況に照らして当該普通自転車の通行の安全を確保するため当該普通自転車が歩道を通行することがやむを得ないと認められるとき。
六十三条の四 2 前項の場合において、普通自転車は、当該歩道の中央から車道寄りの部分(道路標識等により普通自転車が通行すべき部分として指定された部分(以下この項において「普通自転車通行指定部分」という。)があるときは、当該普通自転車通行指定部分)を徐行しなければならず、また、普通自転車の進行が歩行者の通行を妨げることとなるときは、一時停止しなければならない。ただし、普通自転車通行指定部分については、当該普通自転車通行指定部分を通行し、又は通行しようとする歩行者がないときは、歩道の状況に応じた安全な速度と方法で進行することができる。
第六十四条の四の1項三号において「やむを得ない」とは、客観的な状況が存在することを確認した上でなければやむを得ないとは言えないことに注意が必要である。運転者個人が車道走行が危ないと感じても、それだけでは歩道走行が許される理由にはならないのである。
自転車で歩道を走行する場合歩道の中央より車道よりの部分を徐行しなければならないのに、それを守らない運転者が多いと感じる。
歩道を歩いていて危険だと思う行為にスマホを使いながら運転することである。子供を載せながらスマホのながら運転を何度見たことか。子供を危険にさらしながら平気でながら運転する母親がいかに多いことか。大阪府など条例で自転車のながらスマホを禁止している自治体もある。現時点で道路交通法では自転車はスマホ禁止の対象から外れている。早急に道路交通法でも自転車のながらスマホを禁止してもらいたい。
歩行者に対してベルを鳴らすこと禁止されている(道路交通法第五十四条2項)。片側1車線の歩道のある道路の車道の右側を逆走する自転車も多くみられる。自動車を運転しているときに遭遇すると危なくてしょうがないと感じる。これも道路交通法違反である(第十八条1項)。
道路交通法違反と言えば電動スケートボードも気になる。電動スケートボードは原付自転車であり、ナンバープレートが必要である。さらにバックミラーを装着しなければならない。ネットショップで売られている電動キックボードのほとんどがナンバープレートを付けらるようにはなっていないし、バックミラーも付いていない。公道は走れない仕様である。購入者のどれくらいが道路交通法を理解しているのか疑問に思う。
道路交通法違反の確信犯は厳しく取り締まればよい。しかし、大部分の自転車運転者が道路交通法について知らないように思われる。法律は制定する側が伝える努力はしない。知らない者が悪いのである。しかし、歩行者が危険にさらされるような状況が頻発する時代なのだから、政府がもっと伝えることに努力したほうが良いと思う。