通勤中に光治療の車内ポスターが2枚近接して貼られているのが目に入った。それぞれに以下のキャッチコピーが書かれている。
同じ光治療のキャッチコピーなのに全く内容が異なる。どちらのキャッチコピーも主語がないが、ポスター全体を読めば主語は「光(Intense Pulsed Light )」だと考えられる。
上の表現は中黒(・)で粉砕と排出を区切っている。文化審議会国語分科会が令和3年に発行した【新しい 「公用文作成 の要領 」に向けて(報告)】によれば、中黒で分けられた「粉砕」と「配列」は並列である。つまり、光が余計な色素を粉砕したり排出したりするという意味になる。
これはおかしい。粉砕する主体は光かもしれないが、ここでの排出の意味を考えれば、排出する主体は光ではなく人体である。異なる主体のアクションを表す言葉を中黒で並列にすることはできない。これは中黒の使い方が間違っている。
下の表現からは光が余計な色素を排除すると解釈できる。排除とは、大辞林によれば「おしのけてそこから除くこと」である。すなわち光が物理的な力を色素に加えるということである。光にそんな力があるとは思えない。光を主語に排除を使うのはおかしいのである。
どちらのキャッチコピーも日本語としておかしい。この治療法の効能は筆者がどうこう言うことではないが、テクニカルコミュニケーターとして言葉の使い方に一言わせてほしかったのである。