都営地下鉄のエスカレーターに乗ると以下のようなポスターが目に入る。
筆者は最初「止」という漢字が認識できなかった。文字の中に描かれたイラストに注目してしまったからである。イラスト無しのものを作って比較してみた。
筆者の主観ではイラストは無いほうが読みやすい。「立ち」の吹き出しが「止」の文字としての識別を邪魔しているようにも思える。ただし、イラストの意味するところは分かりやすいので、これはこれで生かしたい気はする。筆者自身はグラフィックのクリエイターではないのでこの議論はここまでにしておく。
ここで話題にしたいのはエスカレーターで歩かずに立ち止まることである。一般に大阪以外でエスカレーターに乗る人は、歩かないときは左側に立ち止まる。右側に立ち止まるには勇気が必要となる。筆者は通勤時間帯などには右側を歩いてしまうことがあるので、歩きたい人の心理は分かるつもりである。だから右側に立つことは躊躇してしまう。
先日、テレビでもそのことを話題にしていた。左手が不自由な人が出演し、右側に立つしか安全に乗れないというのである。それなのに、心無い人は歩くのに邪魔だと非難の声を浴びせるというのである。さらに、若い人へのインタビューでも、右側に立ったことはあるが、そのとき「邪魔だから立ち止まるな」と歩いている人から非難されたという回答があった。また、TVレポーターによれば、左側に立ち止まって乗っている人に右側を歩く人が接触し、立ち止まっていた人が倒れるなどして怪我をするケースがかなり多いというのである。テレビの結論は積極的に右側に立ち止まってエスカレーターに乗りましょうというものであった。
接触の原因のひとつとして、手すりに接触するのが怖くて中央寄りに立ってしまう人がいることが考えられる。特に高齢者は体の動きが鈍くなっているので怖くて中央寄りに立ってしまう。そこに勢いよく後ろから接触されると体のバランスを崩してしまうのである。歩く人に、その手前で止まるなどの思いやりが求められるのであるが、全ての人に思いやりを求めることは非現実的である。そこで、右側でも立ち止まろうということになるのである。
鉄道会社でもいろいろと手は打っている。先日以下のような光景にお目にかかった。
エスカレーターの誘導員がプラカードを付けて右側に立ち止まったのである。これは効果的である。しかし、このとき1度お目にかかったきりである。また、この駅では現在エスカレーターが2本平行に動いており、片方を高速運転している。係員が乗り口で「こちらのエスカレーターは高速運転しています。」と誘導している。体感的には1.2倍くらいの速度なのだが、それでも「遅いから歩きたい」という欲求は軽減される。前方に立ち止まっている人がいなくて、半分はみ出した人もいいない場合には「歩くことを許してほしい」というのが筆者の私的で素直な気持ちではある。公的にはきっと「立ち止まりましょう」と言ってしまうような予感はある。と、これはすでに公的発言か!
余談だが、新大阪駅の下りホームの神戸よりのエスカレーターが面白い。下り列車が到着して降りエスカレーターに乗る最初の客が左側に立ち止まった場合、客が途切れない限り、続く客は大阪人であっても左側に立ち止まることが多いのである。上りホームへの昇りエスカレーターでもたまに見かける光景である。新幹線に乗る大阪人には意外とこだわりはなさそうである。