今回は、非常時用に会社などで用意しているヘルメットの取扱説明書について考えてみたい。以下は手元にあるヘルメットの取扱説明書である。製造会社名は塗りつぶしてある。
上の写真を表面としたのは開梱時にこの面の右上6分の1が見える状態で折り込まれていたからである。製作者としては下の写真の面が表のつもりであるかもしれない。この面の上部には
保護帽の取扱説明書「安全上大切なお知らせ」
という文字列を角Rの罫で囲んだ見出しが配置されているからである。本来「保護帽の取扱説明書」と 「安全上大切なお知らせ」 は別の見出しとして分けるべきであるが、これが取扱説明書のタイトルのつもりであろう。しかし、同じフォーマットデザインが隣の
保護帽の「内装」取り外し方法
にも使われているので、取説のタイトルとしては正確には識別できない。といってもヘルメットにはこのペラしか同梱されていないので、誰しもこれを取扱説明書だと認識するだろうから大きな問題ではない。
この取扱説明書は別にツッコミどころがいっぱいあるのだ。まず、ヘルメットの正しい装着方法がどこにも記載されていない。図解されているのは「保護帽交換の目安(20のチェックポイント)」と「内装の取り外し方」の2項目である。ユーザーは誰でも正しいヘルメットの装着方法を知っていることが前提になっているように思われる。主たるユーザーは工事現場などで働く労働者なので知っていることが前提になったのかもしれない。しかし、東日本大震災以降ヘルメットを一般の会社で用意するようになったので、そのような会社に勤めるユーザーは保護帽という言い方はぴんと来ない。(「保護帽」というのは労働安全衛生法でのヘルメットの呼び方である。)
「安全上の大切なお知らせ」の下の記載項目は他社の取扱説明書を見てもほぼ同じ内容である。業界団体の取り決めがあるのかもしれない。しかし私がネットで調べた他社のマニュアルには「着用方法」という見出しで装着方法がイラスト入りで記載されていた。しかし、今話題にしている取扱説明書には書かれていない。
また、「保護帽交換の目安」という見出しには違和感を覚える。開梱してすぐに取扱説明書を読んだとき交換の目安が書かれているのはシュールではないか。すぐ壊れるからよくチェックしてくださいと言っているように思うのは私だけだろうか。他社の取扱説明書にもほぼ同じ内容がイラスト入りで記載されている。しかし、見出しが全く異なる。
保護帽点検 20のチェックポイント
という見出しだ。さらに、その項目の前に「使用前の点検」という見出しがあって、以下のように書かれている。
- 「保護帽点検 20のチェックポイント」で点検し、少しでも異常が認められる保護帽は、使用しないでください。
- 部品類に異常が認められた場合は、ただちに交換してください。(修繕をしないでください。)
異常が認められたら修繕ではなく交換だと言っているのである。交換は異常が認められたときに行うのだと納得できる。「 保護帽点検 20のチェックポイント 」は取扱説明書の見出しとして適切である。見出しが重要であることを示す良い例である。
最後に『保護帽の「内装」取り外し方法』である。ヘルメットの内装をユーザーが取り外す目的は何であろうか。ここには内装を取り外す目的は書かれていない。取り外す必要性を想像できない。下手に素人が取り外し取り付けを行うと安全性に問題が生じるのではないだろか。ユーザーに行わせる作業ではないような気がする。ちなみに、筆者の手元にあるヘルメットは取扱説明書に写真で示されるものとは全く違っていたので取り外すことはできなかった。一応8説明写真の内装はそれぞれ代表的なものを載せております)という断り書きはあるのだが、全く違うのでどうにもならなかった。ちなみに、他社の取扱説明書にはこれに類する項目はなかった。